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お星さまと甚平と新幹線そして

  • 山中好雄
  • 4月14日
  • 読了時間: 13分

秋田を訪れたのは

実に何年振りであろうか

かれこれ何年かと顧みながら掌を眺めている

じっとじっとそしてじっと

そんな掌に

小さな楓の葉がひらりと舞い降りて

私の掌な生命線の真上を陣取ってくる

微笑むそんな私に

実は

天使からの夕暮れ贈答であることを忘れてはいない

涼風な爽やかが左耳たぶを通り越え

そっと私に語りかけてくる



秋田の街並みを久しく一人歩きがら

かつて訪れた恋心の健気さを想いながらも

懐かしく

君の影を不可思議に追いかけるのが

やけに

涙しい

そんな淡い季節を想いつつ

道端で微笑む一輪の可愛らしさに

何故そんなにピンクなのかを聞けず問えず答えられず

ふと右手人差し指をかる一<

横に振り振り

振り

そして振り振り 振り ウインク

さようならの一輪ピンクが

逆に私に 振り返す

それって 後悔なの憂えいなの

それとも 黄昏ているのかな



さて

過ぎゆく涼風の便りに答えるべくか

美味しくすこーし酔ってみるか

かつての面影記憶ある赤暖簾を探すも

日おちの薄暗さを難なく乗り越えれずに

徐々に際立ってこようとしている

お星様がひと一つひと一つ

そろそろ輝きだすのか準備を始めている

ふたぁー一つそしていつつむつつ

下界といえば

赤 青 黄色

多色 多彩 多文字な街のちかちかネオン

チカチカネオンに導かれては

記憶頼りに

その唯ーな一軒を辛うじて探し当てる

ここた

かつての

赤暖簾な面影唯一の一軒を


未熟自身の不確定未根拠単独一方愛とでも心に記録したのか

後頭葉からの指示が伝わり

半ば強制的に納得させられるのが何故か

ハガイイのか 諦めなのか と感じつつ

実にその過去な恋の在り方に

やはり未練は残り得るも

語りかけてくれた二言三言な真心愛


その伝わる優しさの止めどもない一途

七つ見え隠れなお星さまを遠く近くに感じては

秋田の涙に少しの微笑み


そしてのれんをはじいては

探し当てた唯ーな一軒

お邪魔する

数組の男女の影

そんな中にして理も何もなく

一頻り

かつての様に

数ある秋田の地酒を飲み比べるべく

店のアルバイトらしき若造に注文する

最近の彼女いらない車いらない現代若造かと推理するも

z世代かゆとり世代かと

意味なく想像しながらも

こやつが

ちゃんと年金保険料と税金を納めているのかを確認をしないままに

笑顔をもって接する自身の厳しさか

優しさか

そんなことはどぉでも良いと理屈っても仕方のないことに

何の価値もないことを悟る

おそらく

NHKの受信料は支払っていないことだろぉ

因みにNHKの受信料だが

私は最近支払うこととした


徐に運ばれてくる三種の冷酒

多くも少なくもなくと考えつつも

少ぉしその量の中途半端を感じながらも

一種大凡ー合の半分の量程度かとの想像に

何故か心急ぎ

味比べを自身の舌の上に急ぎ乗っけてみる

頭内に於いてあーじゃこーじゃと

自然の議論に脳内がやかましい

つまみの付き出しは何なのかわからない佃煮である

この佃煮君

大凡昨夜の余物を加工したのか

何かの魚風の塩っ辛い風物食

まぁーまぁーの量があるので特に料理を注文しない

店にとっては儲からない輩に見えたか

注文を取りにも来ない

カウンター越しの

店主らしき初老の白衣着の仙人風人物は

こちらを見向きもせずにせっせせっせと

何やら忙しい

なので

取りに来ない注文に

取らせる注文がないことは当然の理ではと

ふて腐れる始末である


一気に三種をどぉーのこぉーのと自問自答しながら評論しつつ

いつしか酒がなくなっていることに気づくに時間はかからない

ふと見ると

それぞれに銘柄を書いた小さな

竹細工でできている説明札があったことに今更気づく

飲み比べを志しての注文だった筈が

飲み干した後に気づくなど

愚の骨頂かと

次の三種に目がいく

唐突に

年金を支払っているか否かを聞く無包丁をよく理解した上で

若造に次の三種を注文する


六種にホロッと酔った赤ら心が懐かしく

それでいて健気で素直で

というか

不可思議な心地よさとなりし頃に

時空の不可思議が宿ってくる脳裏に

そぉ遠くないかつての幸福せは

尚も私の心を誘い誘われ君な君な

憂えう涙に

今は任せ様と

任せようと

任せ

任せと


かつてを想い出す

君を

愛した 君を

心から

かつて


きりたんぽ鍋が卓に登場する

お揃いの甚平を互いに自慢しながらも

赤ら恥ずかしそんな仕草の可愛らしさ

登場するきりたんぽ鍋を前にして

両脇をあげて両肩から上下に左右に小刻みに嬉しさを振動させる

満面の微笑みは細い瞼を尚も細くさせ

その喜びの疎通は

かつて経験のない可愛らしさの究極

万人が

そぉ

魂から感じ入ることだったろぉ

そんな幸福せの一時期を顧みながら


じっと

杯を唇に押し当てる孤身であった

おそろいの甚平の一着が

永遠のお星様になってしまっても

当たる唇な盃の温かみは

決して忘れることは

ない


幸福って奴は

なかなか言うことを聞いてくれないんだ

黙って隣に座ってやくれねぇよなぁ

厄介な奴だぜ幸福って奴ぁと

かつて先輩同業やさぐれ弁護士

幽霊と宇宙人に怯えてるんだという風変わり弁護士が

私に生意気にも教示していたことを

赤ら顔ながら思い出す

しかし まま

信頼ある先輩若造弁護士であった

頼もしい一人でもあった

友人でもあった


時刻を腕の先で確かめる


そろそろを認め

軽い財布に細く微笑み

尚も軽くなることに

特に理屈も意見もない


そした後に後にと

足取りを駅に向け

ほろ酔い赤ら顔を空気にさらしながら

甚平を着していない自身のジーンズ姿を涼しく感じ

ヨタヨタと一人歩を進める

街灯とビルと店舗と車のライトが

半ば都会を形成するのか

夜の田舎道でない明るき歩道を自慢げに歩く

誰も通らない歩道なのに

誰かが私の隣で微笑み腕組み

誰もいない歩道を一人尚もヨタヨタと

肩で風切り歩ける自慢に

満足は何故か追いついて来ない

左程混雑していない駅に到着する

そして

混雑が中途半端な行列の尻につくのだが

切符を求めて15人ほど前を陣取る老若男女に意見はない

ただ窓口が四つあるのに二つのみのオープンに

文句ひとつ言わない日本人を感じる

それを思うに

総理大臣が屋外マスクの不要を唱えても

ちゃんとマスクする日本人

歩かず二列でと訴える放送と掲示にも関わらず

ちゃんと関西の右とその他の左を整列する

エスカレーターに

意味なく従っている自身は

やはり日本人の端くれか

ふと

窓口が緑色でないことに気づき

みどりと称する普通の窓口にて

切符を買い求めることとなることに

なぜ今なのかと気付く無頓着が

私かなと まま 納得する


秋田駅から新幹線に乗る

仙台駅行きである

盛岡駅への最終の新幹線に乗る

と言うも

秋田という地に新幹線が開通して久しいと告げられたのが

なんだか時代の正確さを欠いている自身に

とても頼りなさを覚えてしまう

何故なら

知らなかったに過ぎないからであり

地理音痴ではない筈の自身なのにと

また何故と言うなら

東京都内や大阪市内のメトロ全線に加え

かつての国鉄や私鉄の路線をほぼ把握している私であってしかも全国の

しかもしかもしかもである

三セクに至るまで

鉄道音痴ではないはずの自身

まだまだの未熟さを天使に知らされてしまい

ただ羞恥と共に

笑い呆れるのみであり

自負は他負と化するのであろうか

意味は己心に溶け込もうとしている


急ぎ

盛岡に行かなければならない

どぉしても

今夜中に

後談はしないが

行かなければならない

何故かは

また時を超えて伝える幸せを得られる時としよう


列車は最新式の鼻長突飛型

シートもふかふか最新かなと

お尻が喜ぶ

列車の名称は

『こまち号』だ

お米ではないのに

である

前述のとおり先頭車の鼻先が尖っていて

あたかも商速車両であることが見て取れる

赤い車体に白地というか

クリーム色というか

上部が赤なら下部が白

紅白新幹線なんて

おめでたくなる心への演出がまた


にくらしい


ただ

赤を見ると

ここは広島かと思いきや

秋田であることに半納得

何故ならば

全国どこでも青色のコンビニエンスストアが広島に行けば

一部の地域だが赤なのだ

全国何処でも青なのが

赤である広島

勘違いもする

まぁレッドなヘルメットをかぶってはいないのだがと

なんのことかわからない読者は

ここはスルーである

野球ファンに尋ねてもらいたい


徐に

出発の合図鈴が鳴り響く

昔ながらの出発鈴

りりりりりりりりりり?? と

これでもかこれでもかと

そして

うるさい位にこれでもかと

鳴り響く

都内や首都圏なら

JR東の駅舎から鳴り響く出発合図は

ほぼ

ご当地音楽なのだが

秋田にはないのかなと

ご当地の音楽調べにスマホは踊る

しかし

見つからない

また車内といえば

聞こえるか聞こえないかの車掌のアナウンス

何を言っているのか聞き取れない

と考えに浸る間も無く

りりりりりりりりりり?? と

尚もうるさくて聞き取れない

何の何処が最新式かと心還えるも

切符購入と共に忘れず買い求めた

あるものの存在が

その還られた心を

取り戻す


そして

時を感じることなく

プシュッゥ?? と

ドアの閉まるエアーの音にあっては

一昨日の道路上での

隣の車線にいる大型ダンプのエアブレーキの音との類似に何故か冷や汗も

ゆるやかに

シューっと閉まるドアの音色

少しして

緩やかに動き出す車体は

あまりにも静かで乗り心地の良さに微笑んでしまう

いや

ほろ酔い心には

苦笑いか


ガタンゴトンガタンゴトン

グラフで見るクロソイドカーブの如く

段々と早くなる

その

ガタンゴトンガタンゴトン

更に早くなってゆく

出発した

ん?

んんん?

ゴトンゴトンがたんがたん

何故か

車両が後ろ向きに

何故か車両が進む方向が

ゴトン? ゴトン? ゴトン?

ごと一んゴトーんごと一んゴトーん

だんだん早くなる

真逆である

気づくのが何故か遅いと感じるが

まさかの真逆進行

全ての座席は前と思われる方向を向いているのに

何故か 後ろ向きに進む

乗って

リクライニングを100%後方に解放し

前方座席に備え付けの自分専用のテーブルを下げている

発車前からそんなセッティングをしているものだから

その違和感に

慣れを感じ得ないでいる

最早

進行方向に関わらず

この状態を変更することの困難さに

恐らく誰しもが

無理と感じ入ることだろぉ

またそのテーブルには

私の大好きなイカの燻製と

切符と共に買い求めたあるものであるところの


缶入りの黒の生ビール

が置かれている

いや

自ら能動的に置いたのだ

しめしめとニャニャしながら

置いたのだ

なのに

後ろ向きには走り出すとは思っていず

直立する生ビールが手前に傾くとの予想に反して

向こう側に傾く様は

その確信に刺された水が心に冷たく感じてしまうのは

柔な自身の人生の一部と似ている

大袈裟な感覚が心に瞬時に流れ刺さる

不可思議な経験のない現象と結果に

最早逆らう威力のなさを感じてしまう


さて

逆向き進行にも

自ら専用の晩餐を初め様とする

そこに

いまいましい車掌が巡回なのか

やってくるので

仕方なく

何故か真面目な日本人の習慣か外していたマスクを鼻から覆い被せる

早速の晩酌行為に水を刺されてしまった不快感は

マスクの息苦しさを凌ぐ不快感がある

昨今のウイルス感染を国民総出で防がせる国の施策か

はたまた政治家の思惑か

誰しもがよくわからず洗脳されたマスク着用に

歯向かえない日本人意識が鬱陶しい


車掌の背面を確認して

早速始めることとなる自己大会

いつも満足感に準優勝するのだが

今夜は少し違う

何故なら既にもぉホロっていることと

自然なゆりかご座席に着座しての大会である

いつもの準優勝が

果たしてどぉ動くかが

期待と不安と困惑と確信と安堵と思惑と思考の迷い道とならなければ良いのだが


車内放送の説明では

次の『大曲駅』を過ぎると

ちゃんと前向きに進むという事だ


なんてことだ

そんな列車の進め方は

山に登るためにスイッチバックという古典的な鉄道運行方法があったが

正に

そーではないか

特に感情がないのにも関わらず

大好きなイカの燻製以外の肴としては

うってつけの場面と経験と予定される満足ではないかと苦笑い

スイッチバックはまた後談する


やはりここも後談であるが

後談を多用してはなんと続きかわからなくなってしまうが

そこは読者諸氏の読解力を頼りとすることに

廿えてしまう


何故に秋田なのかと説明していなかったことを徐に思い出す

前述に

かつて訪れた恋心の健気さを想うため

書いた

またお揃いの甚平とも

そぉ

秋田を若に日に

心から愛していた

たった一人の

私とお揃い甚平を纏った女性を思い出し

たまたま東北に来れることとなった機会を見逃すことを許さずに

短き許された僅かな時間を使っての訪問

そして

たった一人というは極当然

複数に保てる心を有せない男な自身に

何等違和はないが

その

たった一人の想いが

わざわざ赤暖簾を探し当てる

『男は夢を追い女は現実を追う』

また

『女は上書き男は保存』

昔先輩から教え聞かされた乱暴な区分けであるが

また

世間はそれに反論は当然あるだろぉが

私は正に

保存する輩そのもので

想い出にしつかりとしがみ付いている訳ではないが

並という普通より大切な感情が上回る

誠に

過去からの遺伝子は

親からもらった染色体組織の構造と遺伝情報

日本人気質と表現する穏やかさを含む情報は

何代となく久遠のバトンタッチに似た進化を感じさせない有様

因みに

もっと脱線すると

読者諸氏に不可思議な当たり前を献上致しますと

両親は二人

祖父母は四人

さてさてコレが10代遡ると

なんと千二十四人

20代遡ると

あははは百万人となってしまう

(末記に一覧)

これに書く方も読む方も

言葉は慎むこととしよう

長くなる一方である


さて

列車は減速を始める

減速を始めるとともに

並行して酔いも減速を始めると思いきや

加速に反転するは

総理大臣が首相と言われることと類似する

なんのこっちゃとこのことを読むも

酔狂の世界では

至極当然の慣わしであろう

大曲駅に到着する

逆向き走行での高速新幹線一人乗車は

なくはないだろぉが

極めて得意な有様か


そこで思い出す

そぉ言えば東京関東の方々は経験があるのか

京急線である

知らない方の方が多い京急線のことをここに置き始めるに誠に恐縮なのだが

淡い時代の思い出がとても詰まっているので

必ず後談することを条件に

文字を走らせることを許して頂きたい

京急線

京急線といえども羽田空港線である

羽田空港線といえども

川崎横浜金沢文庫逗子葉山方面である

関西や東北や北海道、九州の方々、つまり関東圏の方々には絶対何のこっちゃわからな

いでしょうが

実は京急線横浜方面から来る直通の羽田空港行きは

京急蒲田駅から反対方向に進みます

また逆に

羽田空港から横浜方面に向かう列車は

同じく京急蒲田駅から真逆方面に進行方向を変えて進みます

スイッチバックという古来からの鉄道用語の代名詞でしょう


同じことが

この新幹線で行われるのです

この

大曲駅で

新幹線でである


ほろ酔いをよしとしながら

乗車し

私が占有したふかふかシートの背から全体重を押し付けるが如き乗りざまに

横着を感じる余裕なく前に走り出す

やっと

進行方向と座席方向が一致することに

脳の濶滑な対応が心地よい

酒もまたそれを助長しているのか

心地良い

つまりは

美しい女性を口説いて『いいわよ』とそっと耳打ちしてくれる

そんな気分に類似してか

心地いいのである

スピードは増す

残り少ない黒の缶ビールに気付き

予備にポケットにしまい込んであった

ポケウヰスキーの小瓶を

徐に出してしまう


いかんいかんと

思いながらも

つい酔いを助長すべくとの意志に反して

キャップを回し

中の液体を解放してやるが如く

その英雄気分に最早留めは不要かと

かつて大好きな優しい唇に触れた自身の唇に

それを当て込んでは液体を流し込む


かつて


優しい唇を思いながら

あんなにも愛した唇に申し訳ない思いもありながら

グビグビとつい助長してしまう


かつてを想う

純真無垢という四文字熟語が全く当てはる

幼い健気と正直を人にした様な

そんなとてつもない美しい心

瞼に刺さり込むその心は

私の命を超えてゆく尊きホワイト

なのに

私の先読み思いの想定に

当たらない宝くじであった自身が

それを護り抜くことを禁じてしまった


そして読者諸氏に謝らなくてはならない

後談後談と書きながら、いつまでも登場しない後談

次の機会とすることに

どうか

残念と期待と憤りと堪忍と心配と諦めを保って頂き

容赦を乞いお願いする処とする


斬鬼は

まさに私そのものではなかったのかと


心一時微睡む


母さん

僕はこんな生き方でよかったんだろおか

こんな愛でよかったんだろぉーか

一人問いながら

秋田県を後にする虹き新幹線は

スピードを増す


from Yoshio Yamanaka

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